北海道HMCアカデミーとは

北海道HMCアカデミーとは

ご挨拶

 わが国は、歴史的にも世界的にも前例のない超高齢社会に突入しています。多くの問題に直面することが懸念され、そのひとつとして心不全患者さんの増加が挙げられています。私たちはコロナ禍で「医療逼迫」の恐ろしさを身をもって体験してきましたが、心不全の増加が医療逼迫をきたす懸念があることから「心不全パンデミック」とも表現されています。

 心不全は高齢者に多い慢性疾患ですが、いのちにかかわる重篤な病気であり、患者さんの生活の質(QOL)にも大きく影響します。高血圧や糖尿病、不整脈の合併など、心不全発症リスクの高い方に対して、如何に心不全の発症を予防介入できるかがポイントで、地域に密着した心不全療養指導の実践が大きく期待されています。

 多くの外来通院中あるいは訪問診療中の患者さんにとって、薬局薬剤師は身近な存在です。これまで私たちは、心不全療養指導における薬局薬剤師が有する潜在力に着目して、活動して参りましたが、幅広い医療専門職との連携強化が不可欠と考え、このたびNPO法人を設立致しました。

 当アカデミーでは専門的知識・経験を生かして積極的に活動を進めて参りますが、そのプロセスで培われる「地域に密着した医療・福祉専門職の連携体制」は、心不全以外の疾患管理に対しても有効なプラットフォームとなることが期待されます。私たちは、より良い医療サービスが享受できる社会基盤づくりに貢献することを目指して活動しております。皆さま方のご理解・ご支援をお願い申し上げますとともに、医療・福祉・介護専門職へ皆さまのご参加をお待ち申し上げております。
理事長
石森 直樹
北海道大学大学院医学研究院
心不全医薬連携開発学分野
特任准教授

設立の経緯

 わが国は超高齢社会に突入し、心不全患者数は増加の一途で、現在120万人を超えています。心不全は「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだんと悪くなり、生命を縮める病気」です。心不全の悪化により、毎年30万人ほどの方が入院されて、多くは治療が奏功し退院されますが、退院後1年以内に実に3割以上の方が心不全の悪化で再入院されています。こうして心不全入院を繰り返すごとに生活の質(QOL)の著しい低下をきたし、健康長寿の大きな妨げとなっています。

 このような中、日本循環器学会では心不全制圧による健康寿命の延伸を目指して、2021年に「心不全療養指導士」認定制度が創設されました。看護師・薬剤師・理学療法士など多様な医療専門職で心不全管理に関する知識・技能の向上が図られ、医療現場では入院患者さん中心としたチーム医療が始まっています。一方、外来通院中の患者さんや在宅診療を受けられている患者さんでは、関係する医療専門職が別組織に分かれていることもあり、多職種チーム医療の普及にはまだ時間を要する状況です。自宅や施設で安心して健康に暮らすためには、地域における医療・福祉専門職の連携体制の推進が欠かせません。

 外来通院中や在宅診療を受けられている多くの患者さんにとって薬剤師は、医師・看護師とともに身近な存在です。特に薬局薬剤師はわが国に現在18万人おり、地域に根差した心不全療養指導を実践する上で大きな潜在力を有していると期待されます。私たちはこの点に着目し、2019年4月に医師1名・薬局薬剤師5名で抄読勉強会を立ち上げました。その後コロナ禍の影響でオンライン形式になりましたが、心不全療養指導に関する知識・技能の向上と多職種ネットワークの構築に努めながら、積極的に活動を展開してまいりました。

 今後、地域に根差して積極的に心不全療養指導を実践してゆくことを目指しています。そのためには、より多くの医療専門職の方々にご参画いただき、職種間の連携をさらに推進して、地域住民の方々に向けて、強力に発信・実践してゆくことが欠かせないと考え、このたび「特定非営利活動法人 北海道心不全医療連携アカデミー」を設立いたしました。